2001年6月




テキスタイルメーカーでは、フィンランドのmarimekkoとJOHANNA GLLICHSEN、洋服ならセーターのANDERSEN ANDERSEN、そして建築と家具のArne JacobsenとHans J.Wegner 。凛とした佇まいで私たちを魅了する北欧が生んだ品々。いまから18年前、お客さんであり先輩である木工職人の中山さんとオランダ・デンマーク旅行へ行った。中山さんは、pickandbarnsの什器を手掛けた人だから、本人に会っていなくとも、その仕事は皆さん見たことがあるはず。それぞれ互いに行きたい場所を考え、決めたのは航空券と宿泊地のみ。それ以外は、すべて自由。二人の気に召すまま。

 
そのときわたしは、PICKオーナーから教わった雑誌『pen』に魅せられていた。それは、北欧の暮らしと灯りの特集が組まれたもの。照明デザイナーPoul Henningsen / ポールヘニングセンが都市計画まるごと手掛けた照明を、ぐるっと見て回りたかったのだ。当時インターネットはあるものの、現地の情報はほぼ皆無。行く先もオーロラやフィヨルド観光、城巡りばかりで、地元にどんなお店があるか? どんなレストランが流行っているのか? だなんて、調べもつかなかった。



おかげで、行先のひとつにと考えていた『デンマーク工芸博物館』は所蔵品修復で休館。しかし、カフェは営業しており、そのポスターが私の目を奪った。のちに分かることだが、そのポスターをデザインした人物こそ、ANDERSEN ANDERSENのアートディレクターPeter-Kjaer-Andersern(ピーター・ケアー・アンデルセン)だった。残念にも館内部へは入れなかったが、玄関に飾られた彼の代表作「アーティチョーク」は圧巻。中庭へ続く回廊も、まさに静謐がつくる空間でその厳かな雰囲気に声すら潜めたものだ。寝そべるように腰を落ち着けられるウッドチェアーは、いま見てもものづくりへの真摯な態度を感じる。

 
店の看板を照らす灯りの、なんとモダンなこと! レ・クリントのウィンドウにもうっとり。地元住民の憩いの場であり、のちのウォルトディズニーに多大な影響を与えたチボリ公園は、まさに玩具箱をひっくり返したような可愛らしい造作。



街を歩けば、住宅の足元には小窓。暗く長い冬を過ごすデンマークならではの明かり採り。少しの光でも室内に採り入れようとする工夫か。あまりカーテンなどはかけないようで、キャンドルや室内の灯りは通りを行き交う人々と共有しているようだ。

暮らしを彩るテキスタイルや器など、発色が良いものが多いのも頷ける。印象的な装いと言えば、モノトーンの着こなし。体のラインを美しく生かすシルエット。それをさらに引き立てる、ごく僅かな色の重なり。潔い。オランダでは、飾り窓を少し覗いたりも。当時、われわれもぶらり歩いただけだったが、2020年1月には観光ツアー禁止なのだそう。シンゲルの花市は、ガーデニングにも明るい中山提案での散策。目にうつるさまざまな球根の種類と、街の雑踏。すれ違う人々が抱える美しくも素朴な花材。そして、現地人と中山さんとの会話の盛り上がりったら。まったく日本語が通じないにも関わらず、笑いあっている。ゴールデンレトリバーは、国境を超える。2ヵ国10日間の旅、また行きたいとも思ったが、私たちが訪れたのは、彼らの日常。自分たちが暮らす福島の街にも、彼らが来たい景色はあるのだろうか? そう思ったら、よそに行って感激してるばかりでは仕方がない。いかに普段の暮らしの愉しみを、自らで作り上げるか? そのこと自体を見つめよう。いまのデンマーク・コペンハーゲンの街並みは、変化しているだろうか? 自分たちの暮らす福島は、どう変わってきたか。当時の写真を振り返り、工芸博物館のポスターを見て感慨に耽る。

saKae